
プロテスタントの最大の「異端」とは?
2022年06月17日(木)
TULIPと改革派神学:聖徒の堅忍(Perseverance of the Saints)
2022年07月12日(木)TULIPと改革派神学:不可抗的恩恵(Irresistible Grace)

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歴史的な宗教改革思想では、「新生は信仰に先立つ」と考えます。また、新生は単働的(monergistic)であると考えます。おっとこれは難解な用語が出てきました。説明いたしましょう。この言葉はつまり、再生、または新生と呼ばれる神の御業は、神のみによるものであるということを意味します。英語の「erg」という部分(日本語では「働」)は労働の単位、仕事の単位を表します。「Energy(精力、気力)」という単語はその考えからきています。接頭語の「mono」(日本語では「単」)は「一つ」を表します。ですから、単働説(monergism)というと、「一つの働き」という意味になるのです。つまり人間の心の新生の働きは、神の力のみで成されるものであり、神の力が50%と人間の力が50%、または神の力が99%と人の力が1%というようなことはあり得ません。100%神の御業です。神が、そして神だけが、人の魂と心の性質を変え、私たちを信仰に導くことができるのです。
さらに、神はこの恵みを魂のうちに行使されるとき、神の意図された通りに、この恵みを有効なものとしてくださいます。神があなたを創造されたとき、神があなたという存在をもたらされたのです。あなたは、何の手助けもしませんでした。生物学的にあなたを誕生させたのは、神の主権的な働きでした。同様に、あなたを再生させ、新しく造られた状態にするのもまた、神の御業であり、神のみによるものです。これを、私たちは不可抗的恩恵と呼びます。つまり働きかける恩恵、恵みです。神が望んでおられることをもたらす恵みです。私たちは罪と咎の中に死んでいた者です。そして、私たちの意志は、肉の欲に囚われており、救われるためには肉から解放される必要がありました。これらが確かな事実であるとするなら、救いは最終的に、神が私たちの内に、私たちのためになさることであって、私たちが自分のためにすることではないはずです。
しかし、不可抗的というと、人は神の恵みに対していかなる抵抗もすることができないというイメージを思い浮かべるでしょう。しかし、人類の歴史を見てみると、人間は神の恵みの素晴らしさに絶えず抵抗し続けてきました。不可抗的恩恵とは、神の恵みに抵抗できないという意味ではありません。事実、私たちは神の恵みに抵抗することができますし、実際に抵抗しています。ですから、不可抗的恩恵とは、神の恵みが、私たちの生まれながらの抵抗に打ち勝つほど強力であるということを意味します。聖霊は決して、抵抗して大騒ぎをする私たちをなだめて、キリストのもとに引きずり込むのではありません。聖霊は私たちの意志や願いそのものを変え、かつてはキリストを受け入れようとしなかった私たちを、ただ受け入れるどころか、今や大いに喜んでキリストに近づく者へと造り変えてくださるのです。私たちは決して、キリストに引きずり込まれるのではありません。聖霊が私たちの心を変えてくださったことによって、私たちはキリストに駆け寄り、喜びをもってキリストを受け入れるのです。そのとき、私たちの心は神の命令や福音の招きに無関心な石の心ではありません。神が私たちを新しく造り変えられたとき、かたい心はやわらかくされたのです。私たちがキリストに近づきたいと願うのは、神がすでに、私たちの魂に恵みの御業を行われたからに他なりません。その御業がなければ、私たちは決してキリストに近づきたいと思わないでしょう。「新生が信仰に先立つ」というのは、このことを意味するのです。
お察しの通り、私は不可抗的恩恵という言葉にも多少問題を感じています。それはこの古典的な教理を信じていないからではなく、この言葉が多くの人に誤解を与えているように思うからです。私は、有効な恩恵と表現したいと考えます。なぜなら、不可抗的な神の恵みは、神が意図された通りに、有効とされるからです。
このシリーズの最後の記事では、TULIPの「P」にあたる聖徒の堅忍(Perseverence of the Saints)について考えます。
参照記事:
- TULIPと改革派神学:序章
- TULIPと改革派神学:全的堕落(Total Depravity)
- TULIPと改革派神学:無条件的選び(Unconditional Election)
- TULIPと改革派神学:限定的贖罪(Limited Atonement)
- TULIPと改革派神学:不可抗的恩恵(Irresistible Grace)
- TULIPと改革派神学:聖徒の堅忍(Perseverance of the Saints)
