シオン

編集者注：これはテーブルトーク誌の「誤解されている聖書の言葉やフレーズ」というシリーズの第十一章の記事です。

優れた王が反乱を制圧した後、首都にわき起こる盛大な祝賀を想像してみてください。それが、聖書の中でシオンが表すイメージです。シオンという言葉は、もともと神殿が建てられたエルサレムにある山を指します。しかし、聖書の物語が展開するにつれ、シオンは神の敵に対する勝利を象徴するようになり、さらに多くの意味を持つようになりました。

影のシオン 

シオンの物語は、主がその場所を選ばれたところから始まりました。「主はシオンを選び　それをご自分の住まいとして望まれた」（詩篇132:13）。しかし、その場所に住み、神の支配を確立するためには、まず主のシオンの山を占領していた敵たちを倒す必要がありました。その敵とはカナン人であり、特にエブス人でした。神の助けにより、ダビデはこの神の敵の最後の要塞を攻め取ったのです（二サム5:7; ヨシュア15:63参照）。

敵を征服した神は、ご自身の都を築かれます。神は新しい都の中央に神殿を建てるよう、ソロモンに命じられました。最終的に、ソロモンは契約の箱をシオン（かつてのエブス人の都）から、新しいシオン（神殿の山、一列王8:1参照）へと運びました。神は下り、ご自身の栄光で神殿を満たすことで、これらの労苦を栄誉で報われました（一列王8:11）。神がシオンの礎を据えられ、それを完成させてくださったのです（イザヤ14:32）。

詩篇132篇は、主が地上の王として王座につかれたとして、これらの出来事を、祝っています。もちろん、神は常に創造主として支配されるお方です。しかし今、主は全地における公正な王として、公に認められたのです。

ですから、シオンについて考えるとき、主の支配を覚えてください。シオンには、高き王として住まわれる主がおられます（詩篇9:11; イザヤ24:23）。シオンにおいて、主はダビデを、主に代わって治める臣下の王として立てられました（詩篇2:6; 110:2）。実際の高度に関係なく、主がすべての国々の民の上で治めておられるシオンこそ（詩篇99:2）、地上の山々の中で最も高い山です（詩篇48:2; イザヤ2:2参照）。

世界の中心にあるシオンは、万物の王なる主がその支配を行使される場所です。王なる主の救いがシオンから来ます（詩篇14:7）。シオンには主のすべての民が来て、主を賛美し、献身を誓います（詩篇65:1; 84:7）。シオンは、他のどの場所にも見られないような神の栄光が輝く場所、新しいエデン、地上で最も麗しい場所です（詩篇50:2）。神の民はその場所を愛するあまり、いつもそこに住まうことができたらと願っています（詩篇84:2-4）。

このように、シオンは他のどのような場所にもない方法で神を象徴します。神の御名がここに住まわっているのです（イザヤ18:7）。シオンの栄光を見るなら、主の栄光を見ます（詩篇27:4）。シオンを蔑むことは、主ご自身を蔑むのです（イザヤ37:22-23）。そして、神の支配がエルサレムから外に向かって放射状に広がるように、シオンというその名も、波紋のように広がっていきます。シオンは、神殿の山だけでなくエルサレム全体を指すことも多く（イザヤ40:9）、時には「シオンの娘」とも呼ばれています（または「シオンの女」、ミカ4:10）。シオンはまた、イスラエルの民全体を指すこともあります（イザヤ51:16）。

シオンが世界における揺るぎない支配の象徴であることを考えると、シオンが国々によって崩壊に至ったことは驚くべき出来事です。神の王座そのものである神殿が灰の中に横たわるなど、どうして起こりうるでしょうか（ミカ3:12; 詩篇125:1参照）？　それは、神の王権に対する民の反逆のゆえに、神ご自身がその御座を見放されたからです（エレミヤ7:13-14）。

究極のシオン

しかしなおも、シオンは破壊されたにも関わらず、その驚くべき約束を継承し続けています。預言者たちは、神が再び、さらに大きな栄光のうちにシオンに臨まれることを約束しています（イザヤ4:3-5; 51:11）。しかし、主がイエス・キリストの姿で再び来られるときは、地上の神殿からでなく、天のシオンにある天の神殿から臨まれるでしょう（ヘブル12:22; 一ペテ2:6）。影のシオンは、ずっとこの究極のシオンの写しに過ぎませんでした。最初のシオンがどれほど栄光に満ちたものだったか考えてみてください。そして今、イエスの勝利の完成の後、この究極のシオンがどれほど輝き渡っているか実感できるでしょうか。あなたも私も、この天のシオンの国民です。そしていつの日か、この山が新しい天と地のすべてを満たすようになるでしょう。

この記事はテーブルトーク誌に掲載されていたものです。