神のさばきと憐み
2023年01月06日(木)
事実に基づく福音書
2023年01月11日(木)
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中心がずれていませんか?

編集者注:これはテーブルトーク誌の「福音書」というシリーズの第九章の記事です。

一度聞いたことがあれば、幾度となく聞いたことがあるでしょう。「カルヴァン主義の福音伝道者? それって矛盾していませんか? カルヴァン主義者こそ伝道を弱体化させていますよね」 このような非難はあまりに何度も繰り返されてきたため、反論しようとする人はほとんどいません。むしろ、当然のことだと考えられています。最も偉大な教会の伝道者たちの中にカルヴァン主義者が何人かいることは、忘れられているのでしょうか。ジョージ・ホィットフィールドやデイヴィッド・ブレイナードなどはあまりにも有名です。「近代海外宣教の父」と呼ばれた、ウィリアム・ケアリーもいます。しかし、人々はこう言います。「確かに彼らは偉大な伝道者であり、カルヴァン主義者でしたが、それは彼らが矛盾していたからだ」 しかし、果たしてそれは本当でしょうか?

実際のところ、カルヴァン主義は伝道と矛盾しているのではなく、特定の伝道方法と矛盾しているだけなのです。例えば、チャールズ・フィニーなどのリバイバリストが生み出したような、感情に強く訴える伝道方法とは矛盾します。しかし、このようなやり方は聖書とも矛盾しているので、それを否定することは誤りではありません。伝道が神に喜ばれるものであるためには、聖書の教えの全範囲と一致していなければならないのです。では、それはどのような伝道でしょうか?

この問いに対する古典的な答えは、R・B・カイパーの小冊子『神中心の伝道』(Banner of Truth出版 [訳注:日本語訳は聖恵三寿授産所出版部])にあります。この本は伝道というテーマについて、聖書の教えの全範囲に及んで調べています。カイパーは伝道について、非常に簡潔に「福音の発布」と定義しています。これはつまり、言い換えれば、福音の宣言です。カイパーは彼の著書について「(この本は)神中心の伝道を嘆願するためのものであり、それは人間中心の伝道とは異なる」と説明しています。すなわち、この本は伝道の神学を提示しているのです。

最初の数章には、神中心の伝道に欠くことのできない神学的前提条件が示されています。カイパーは神ご自身が伝道の創設者であり、世界の基が据えられる前から、罪人の救いを計画されたことを説明しています。この点から、神の愛、神による罪人の選び、神の契約が、章ごとに議論されています。これらの基本的な神学的土台を提示したのち、カイパーは神の主権と大宣教命令から始まる伝道の様々な聖書の側面を取り扱っています。

大宣教命令において、イエスは弟子たちに「あらゆる国の人々」を弟子にしなさいと命じられました。伝道の範囲は、全世界に及びます。福音はあらゆる人に宣べ伝えられるべきものなのです。救いのためにキリストに対する信仰が必要だと語る聖書を、私たちが本当に信じるなら、伝道の緊急性は明白になるでしょう。数々の異端の神学は、未信者たちには死後に「セカンドチャンス」があると教えることで、伝道の緊急性を損わせています。しかし、そのような教えは聖書的な根拠がなく、それを主張することは純粋な憶測に過ぎません。

私たちの伝道への第一の動機は、神に対する愛と、隣人に対する愛であるべきです。神を愛する人は、喜んで神の宣教命令に従い、伝道し、弟子をつくるでしょう。隣人を愛する人は、彼らのために永遠のいのちを望むより大きな望みは他にありません。このような人々は、彼ら自身のような罪人が救われ、その結果教会が成長することで、神に栄光を帰すことを目指します。

神によって定められた伝道方法は、神ご自身のみことばです。神のみことばを宣べ伝えることを通して、聖霊が有効的に人々の心に信仰を起こされます。伝道の具体的なメッセージは福音です。パウロはこのメッセージを、コリント人への手紙第一15章3-5節に要約しています。「私があなたがたに最も大切なこととして伝えたのは、私も受けたことであって、次のことです。キリストは、聖書に書いてあるとおりに、私たちの罪のために死なれたこと、また、葬られたこと、また、聖書に書いてあるとおりに、三日目によみがえられたこと、また、ケファに現れ、それから十二弟子に現れたことです」 福音を聞いた人が、救われるためにはどうしたら良いかと尋ねたとき、聖書は答えをこのように示しています。「主イエスを信じなさい。そうすれば、あなたもあなたの家族も救われます」(使徒16:31)。

カイパーは、この本の最後の数章で、伝道への熱意、聖書的な伝道方法、伝道における協力、伝道への抵抗、伝道の勝利などのテーマについて調べています。カイパーの議論から、私たちは大きな希望をもって福音を宣べ伝えることができることを再認識させられます。私たちの伝道が実を結ぶとき、「すべての国民、部族、民族、言語から、だれも数えきれないほどの大勢の群衆が御座の前と子羊の前に立ち、白い衣を身にまとい、…『救いは、御座に着いておられる私たちの神と、子羊にある』」と叫ぶのを見ることができるでしょう(黙示7:9-10)。

教会はあまりにも長い間、世俗的な方法で価値ある目的を達成しようとしてきました。私たちは今こそ、カイパーの訴えを心に留め、人間中心の「マディソン・アベニュー手法」 [訳注:アメリカの広告業界を代表するニューヨークのマディソン・アベニューにちなんで、人目を引くための、策略をこらした手法の意味] を手放そうではありませんか。どうか私たちが、神に栄光を帰す方法で、大宣教命令の使命を果たすことができますように。


この記事はテーブルトーク誌に掲載されていたものです。

キース・A・マシソン
キース・A・マシソン
キース・A・マシソン博士は、フロリダ州サンフォードにあるReformation Bible Collegeで組織神学の教授を務める。著書に『The Lord’s Supper』『From Age to Age』などがある。